「閃空裂破ぁ! どーよ、どーよ!やっぱ俺様輝いてる?」
「いちいちうるさいねぇ、先に進むよ。ほらコレットも顔引きつらせてまでアイツにあわせる必要ないから」
「しいなは冷たいねぇ〜。こんな天才的頭脳を持った超イケメンでビューチホーな…」
「はいはい、アンタは天才だね〜」

と、いつものようにゼロスを軽くあしらうしいな。毎日のように見られる光景だった。

「ふー、やっと昼飯だな。今日の当番って誰だっけ?」
「あ、そうだ。今日あたしだった〜。どっかのアホがうるさいからすっかり忘れてたよ」
「俺様しょんぼり…。」
「うーん、献立全然考えてなかったよ…」
「しいな!僕、しいなのおにぎり好きだからさ。作ってよ」
「あ、俺も俺も!しいなのおにぎり他のとちょっと違うんだよな〜」
「確かに、しいなのおにぎりには何か伝統的なものを感じる」

ジーニアスの意見に次々と賛成し、昼ご飯のメニューはおにぎりとなった。

「少し、見物させてもらっていいか?ミズホの民の調理がどのようなものか見たいのでな」
「ああ、別に構わないよ」

しいながそういうとリーガルは近くにある切り株に座り、調理を見物し始めた。

「リーガル、あたしの料理なんか見ても参考になんかならないんじゃないのかい?」
「いや、我々のようなシェフが作る料理と忍びの作る料理には何かしら違いがある。それを見極めたくてな」
「あたしの里に興味持ってもらえるのは嬉しいけど、あまり人に披露すんじゃないよ〜?あくまで隠密集団なんだからサ」
「ハハハ、分かっている。」

と、少し話を挟みながらも丁寧に絶妙の握力でにぎっていくしいな。

「しいなは里でも料理を頻繁にしていたのか?」
「ん?ああ、里の人たちから教えてもらったりしてたねぇ。あの時は何でも人に披露したがる歳だったし」
「なるほど。しいならしいな」
「…それ褒めてんのかい?」

冗談まじりで話がはずんでいく頃、他のメンバーは…

「あー、しいなの飯まだかなー…俺もう腹へって死にそうだぜ〜」
「テーブルに顔をのせるんじゃありません!行儀の悪い」
「って言ってもさ…」
「…あの、皆さん。ゼロスくんはどこへ…?」
「あれ?さっき一人で奥のほうに進んで行ったよ?」
「一人で大丈夫かよ…」
「貴方よりは安心だけど、少し心配ね」
「…しかし、ここで下手に動くとその人もはぐれてしまう可能性があります」
「さすがプレセア、あったまいいなぁ…♪♪」

すると調理場の方から「できたよー」という声が聞こえた。

「おおーっ、美味そう!!」
「待ちなさいロイド。ゼロスが帰ってきてからよ」
「うえ〜…。」
「…?あのアホ神子がどうかしたのかい?」
「実はさっきから姿が見えないのよ。何処へ行ったかは分からないけれど…」
「あー、もう!しょうがないねぇ。あたしが探してくるよ」

そういうと森の奥へと走っていくのだった。

「姉さん、しいな大丈夫なの?」
「しいななら安全だとは思うけれど…。」

リフィルはそう言ってしいなの方向を見つめていたのだった。



「あの、馬鹿っ!何処行ったって言うんだい…」

しいなは真剣にゼロスを探していた。
何といってもゼロスは小さい頃からの知り合い…
そして、唯一自分を励ましてくれた人間でもあった。



「お前が失敗したせいで頭領が!」

『う、うぅ…ごめんなさい…』

「謝って済む問題じゃないだろう!この裏切り者!!

!! う…、裏切り…者…?
それを聞いたあたしは里を飛び出した。そしてたどり着いた場所が…王都メルトキオ。

「うっ、うっ…」

隅っこで泣いてたあたし。そんな時…


お、どうしたんだいお嬢さん?


馴れ馴れしく話しかけてきた赤髪の少年、それがゼロスだった。

「ヴォルトの契約に…失敗して…おじいちゃんが…」
「ふーん・・そんな事があったのか…ま、よく分かんねぇけどそういうのってこれから取り戻せるんじゃねーの?」
「かっ、簡単に言わないどくれよ!」
「…だって俺、そんな難しい話どう答えりゃいいか分かんないし。失敗したのを忘れて次から頑張りゃいーんだよ。」

そのフザけた言葉が、なぜか胸に響いた。




それからあたしは…アイツのことが好きになった。


「ゼロスーっ!!」

《ゴスッ!》

「! …こっちか!!」

かすかな物音を感じた。だが、それと一緒に嫌な予感がした。

「ぐっ…やっぱりここらへんのモンスターは中々手ごわいねぇ…」
「ゼロス!」
「し、しいなぁ!?お前どうしてこんな…ぅおっと!」
「話は後!今はコイツら何とかするよ!!」
「ひえー怖い怖い。分かりましたよっと」

ゼロスは一人でモンスターの大群と戦っていた。ありえない数だった。

「はぁ、はぁ…、やっと終わった」
「それじゃロイドくんのとこ戻るとするかー…」
「ちょいと待ちな!アンタ、何でこんなところに一人で離れてたんだい」
「いや、それは…えーっと…なんつーかアレだ。敵がたくさん居たし…ねぇ?」

…え……?
もしかして、コイツ…あたしたちに被害が行かないように一人で?

「馬鹿!」
「…悪かったよ」
「あたしが…どんだけ心配したって思ってんだい!!あたしだけじゃない!みんなだって凄い心配したんだよ!」
「しいな…」
「あたしが言えることじゃないけどさ…。何でもかんでも一人で背負い込むなってロイド言ってただろ?」
「…やれるのは今しか…ないから…」
「…え?」
「ん?あ、いや何でもない。それよりロイドのとこ戻ろうぜ。俺様はらぺこで死にそ〜」

ため息をひとつつくとゼロスは歩き出した。

「…馬鹿っ」