スプリーム・エレメンツ!!

長身の女性がそう叫ぶと女性のまわりに地水火風を司る大精霊が現れ、魔物を蹴散らしていった。
そして女性が合図をするとその大精霊達は瞬く間に消えていった。

「お疲れさん、ミラお嬢さま」

ミラと呼ばれた女性は先の戦闘で乱れた衣服を何事も無かったかのように整える。

「いやしかしいつ見てもエグいな、おたくの付き人の大精霊とやらは」
「ふふ、ありがとう。お前の援護もさすがだったよ。アルヴィン」
「そりゃありがたいお言葉だ」

アルヴィンと呼ばれた青年は褒められたにも関わらずバツが悪そうに頭をかきむしり答えた。

「ん〜でもやっぱりミラはすんごいよね!何ていうか、見てるこっちが戦ってる気になるというか!」
「レイアもちゃんと戦ってください」
「言われなくても戦ってますー!たまたま回復術使ってるとこを見てただけでしょ!」
「レイアもはたらけー」
「んもう、ティポうるさい!」

棍を背中に直したレイアを小馬鹿にする幼い少女と喋るぬいぐるみはエリーゼとティポ。
その光景を苦笑いしつつ後追いする少年と老人はジュードとローエン。
はたから見れば異色に違いない組み合わせの六人はそんな会話の後、目的地のカラハ・シャールへ向かい歩き出すのであった。




「カラハ・シャールに着きました!」
「ドロッセルお嬢さまはお元気でしょうか」
「それを確かめに来たのだろう、ローエン。屋敷へ向かおう」

一行が向かった先はカラハ・シャールの奥にそびえ立つ一番大きなシャール家の屋敷。
ローエンは自分が仕えていた頃の記憶を思い出しながらドロッセルとの再会を楽しみにしていたのだった。

「あら、皆さん!来て下さったのですね!ローエンとエリーも元気そうで」
「ドロッセルだーーー!!」
「あらあら、エリーったら」

そうこうしている内にシャール家領主・ドロッセルに出会った一行。
ドロッセルの姿を認識した瞬間、その大きな胸に顔を埋めるエリーゼとティポであった。

「お嬢さま、変わりないようで安心いたしました」
「ありがとう。毎日少しずつだけど前進しているわ。」

とはいえ、領主になりまだ日も浅いドロッセルの目の下には大きな隈ができていた。
それを確認したローエンは一行を連れ屋敷の一室で話をする事を提案するのだった。

「…そうですか、そのようなことが」

ミラ、エリーゼ、ローエンはドロッセルにこれまでの冒険の話をし、つかの間の休息を楽しんでいた。
その他の三人は屋敷を出て、市場を散策してみることに。




「しかしジュード君よ。何でまたカラハ・シャールに来ようと決めたんだ?」
「何で、って…嫌だった?」
「そうじゃねーよ。俺たちには時間が無いってのは分かってんだろ」
「それはそうだけど…何ていうか、何かをなすにも思い残しが無い方がいいじゃない?」
「なるほど、ローエンとエリーゼのためってか。さすが優等生は違うわ」
「もー、またそうやってアルヴィンは茶化すんだから!いい加減ジュードをいじめるのやめてよねー」
「なーんでおたくが顔真っ赤にするんだ?」

意地悪な顔をしながら質問するアルヴィンの言葉にトマトのように顔を真っ赤にするレイア。
その二人のやりとりを『仲が良いんだなあ』とのほほんと受け取るジュードであった。

「あっ二人とも!あんなところに新しいお店ができてるみたいだよ。行ってみよう!」
「ジュード!待ってよー!」
「…ったく、優等生だと思ったらガキみてーなところもあるし、アイツ見てると飽きねーわ。ほんと」

ジュードを慌てて追いかけるレイアと別の方向へ一人で歩き出すアルヴィンであった。




二人が辿り着いたのは様々な装飾品が並んでいる、言わばアクセサリーショップだった。

「うわー、アクセサリーだよジュード!私ルロンド以外でこういうお店初めてかも」
「そうだね。ていうかレイア、アクセサリーとか興味あったの?」
「失敬だなあ。この髪飾り目に入らないかな!?」
「あ、あははは、ごめん」

綺羅びやかな装飾品の数々に目を輝かせるレイアとそれを見て微笑むジュード。
そんな二人の関係は何も知らない人から見ればまるで恋人同士のようである。

「…ねえジュード。」
「なに?」
「ジュードさ、変わったよね。変な意味じゃなくてさ」

先ほどとは様子が違うレイアにジュードは少し戸惑った。
そんなジュードを尻目にレイアは話を続ける。

「さっきもさ、自分からこのお店見つけて入っていったじゃない?それから私を手招きして」
「なんか、昔のジュードとは違うんだなって」
「レイア…」
「自分で言うのもなんだけど、昔は私の方が無茶してたっていうか…今も無茶はしちゃってるけど」

何か喉に引っかかっている言い方をしながらレイアはアクセサリーに目を向けて行った。

「すいません、これとこれください!」
「ジュード!?」

突然すぎるジュードの行動に驚くレイア。
会計を済ませるとジュードはレイアを置き去り店を出る。その行動にもレイアは驚いた。

「ちょっとジュード!置いてかないでよ!」
「レイア、これ」

店を出たジュードから手渡されたものは赤い宝石を輝かせるネックレス。
それをいきなり自分の目の前に差し出され、またもレイアは驚きを隠せずにいた。

「どうしたの?いきなり」
「昔っから僕はレイアにつきっきりで自分の意見なんてまともに口に出来なかった」
「でも、それでも、レイアと一緒に居られて楽しかったよ。昔も今も。そりゃ大変な事のほうが多いけど」
それでもこんな僕が人から変わったって言われるようになったのは、レイアのおかげだから

まずレイアは『そんなセリフどこで覚えたのだろう』と思った。
それでも今、自分の目の前にいる幼馴染が相当な覚悟で告白してくれた事に嬉しくなり自然と笑みがこぼれた。

「…もう、何かと思ったらそんなことー?」
「そ、そんなことって何だよ!僕は本当にお礼をしたいってのもあったし」

ジュードの言葉を塞ぐようにレイアはネックレスを受け取り屋敷へ早足で歩き出した。

「あっ、ちょレイア!?」
「ありがと、ジュード」
「えっ?レイア、今なんて…」


(…ジュード。ジュードが変われたのは私のおかげじゃないよ。私じゃなくて…)



あとがき 2015/1/20
レイアが好きすぎてジュード×レイアというよりレイアの片想いが書きたくて仕方ありませんでした。
エクシリアはキャラが個性派揃いなので題材としてとても書きやすくて良いですね。