「今日からこの学校に入学することになったロイドよ」
ロイド・アーヴィングだ。みんな、よろしくな!

鳴り止まない拍手。ロイドはその歓迎の輪にすぐ溶け込んでいった。



「アレってもう何年前のことなんだろー?」
「そうだなぁ…忘れちまったよ。昔のことなんか」

冒険者の町ハイマで休憩を取ることにした一行。
自由時間なのだが山道が多く危ないので二人組での行動になっている。
ロイドとコレットは二人組になり、見晴らしがいい頂上に二人で座った。
そして自分たちの昔話に花を咲かせていたのである。

「あん時は面白かったなー!コレットすぐコケるからドッジボールすぐ負けてさ」
「もー!ロイドの意地悪っ」
「アハハハ、悪い悪い。でもそこがコレットらしくて良かったよ」
「そ、そう…?」

しいなが聞いたらイフリートが飛んできそうな会話にコレットは顔を赤くしていた。
一方のロイドはキョトン顔をしているのだが。

「俺さ…あの学校に入学できてホントに良かったと思う」
「…ロイド…。」
「すっげー楽しかったじゃん!毎日、毎日ドッジボール!もう最高だったぜ!」
「もう、ロイドったらドッジボールばっかり!」
「ハハハハハハっ!!」

そんなロイドの興奮治まらぬ中コレットが少し残念そうに口を開く。

「…私は何かできた?」
「えっ?」
「クラスの子たちと凄く仲が良くて、凄く楽しそうだったロイド…
 ジーニアスやリフィル先生が転入してきてますます楽しそうで良かったよ?
 でも…そんなロイドの役に私は立てたのかなあ」

それを聞くとロイドは少し黙り込んでしまった。

「…俺のために頑張る必要なんか無いだろ?コレットはコレットだよ。
 コレットの好きなように過ごしていったらいいんだよ。それにコレットと喋ると楽しいしな」
「…ありがと」


「ボール、そっちに行ったぞ!」
「うわァ!ぶつかっちゃった〜」
「へっへー、俺のチームの勝ちだー!!」

「あ・・・私も、仲間に・・・」

「コレットは神子なんだろ?だったら体大事にしなきゃ」
「だよな。怪我させたら俺らだって大目玉食らっちまうし」


どうして…神子だから、大事にしなくちゃいけないから遊べないの?
そんなの友達じゃない…お願い…仲間に入れて!!一人にしないでっ!!!


「!!」

暗闇の中、バサッと大きな音を立て目覚めたコレットはこの上ない恐怖を感じていた。

「…夜……」

いつもは星を見るのが好きなのに今日は何だか夜が怖い…
目を閉じ必死に時が経つのを待つ。

<<…カチ、カチ、カチ…>>
時計の秒針の動く音が耳に鮮明に聞こえてくる。

「…仲間…」

夢で頭に残っている唯一の言葉。
いつもは安心するその言葉の響きも今は凄く辛く、胸が痛くなりそう。


「やあっ!たあっ!」
その静寂を破るように外から声が聴こえた。


「…誰だろう」

窓から少しのぞいてみるとそこには剣を振る幼馴染の姿があった。


「はっ!たあっ!」

『駄目だ、これじゃ駄目だ!!』
『これじゃミトスどころか、クラトスにも勝てねえ!』
荒い太刀筋で木に傷を斬りこんでいくが一向に倒れる気配が無い。

「このままじゃ駄目だ…ちくしょうっ!!」
「…ロイド?」
「こ、コレット!?」


「なんだ、コレットも眠れなかったのか」
「ロイド…お昼もいっぱい戦ったのに夜も特訓して…体壊しちゃうよ?」
「だったらコレットも今日天使術使いすぎだぜ。アレってすげー体力使うんだろ」
「そ、そんなことないよぉ。私見てただけだもん」
「んなことねーって!」

互いに言い合いをしていると自然に話が止まってしまった。

「…不安なんだ。このままだったらクラトスにも勝てないんじゃねーかって…」
「駄目だよロイド!私を真っ暗なところから助けてくれたのはロイドじゃない!!」
「コレット…」
「…ごめんねロイド。私、一人じゃ何もできないから頼っちゃって…」

うつむくコレットの姿をロイドは見ているだけしかできない。

「…いや、やっぱりごめん。俺がコレットを守らないといけないときに変になっちまって」
「ロイドは悪くないよっ、私が悪いの!」
「俺が悪いんだって言ってるだろ!何でコレットが悪いんだよ!」
「だ、だって!!」

コレットは言葉に詰まってしまう。

「…ずるいよ、ロイドは」
「え?」
「何があっても全部自分のせいにして、ロイドらしくないよ」
「あのなぁ…お前だって再生の旅のとき、そうだっただろ?」
「うん、そうだよ。でもそれを変えてくれたのはロイド」

コレットは一歩も下がろうとしない。そんなコレットに降参したロイドは肩を落とす。

「…はぁ。サンキューなコレット」
「ど、どうして?」
「お前のおかげで間違わなくて済んだみたいだ、俺。
 仲間と話してるとさ、凄く落ち着いて焦ってたときの自分が馬鹿に見えるぜ」
「それって私がロイドより頭が悪いってこと?」
「い、いやそういう意味で言ったんじゃないけどよ…」
「ふふっ♪やっぱりロイドは可愛いね」
「あ、あのなぁ!」
「…もう、寝るね。それじゃ、お休みなさい」

そういうとコレットはあっさりと立ち去ってしまった。

「…そうだ、無理にブンブン刀振っててもしょうがない…」

ロイドは目をつぶり一本の剣に神経を集中させた。
その集中方法はクラトスから授かった「戦術指南書」の方法である。

「魔神剣!」

ザシュ! …ズトン…
地面を這う鋭い斬撃は大木を一気に倒した。

「…クラトス、俺やってみる。俺だけの力で強くなったわけじゃないけど…
 俺の今の力をアンタに精一杯ぶつけてやる!!

全てはコレットを、仲間を守るため。ロイドはその木刀に決意した。



+あとがき+
執筆時間に何故かめちゃくちゃ時間をかけてしまいましたこれ。
コレットは天然過ぎて書いてるこっちが恥ずかしくなるんですよね。