「うわー!しいなっていろんな髪飾り持ってるんだね!」
「ああ。ミズホの女性はかんざしがしきたりなんだ。みんな髪飾りでおしゃれするんだよ。」
「いろんな柄があるのね。」
「綺麗です」
神子一行はしいなの契約精霊、コリンの供養のためミズホの里に来ていた。
しいな曰く色々準備があるらしく、しいなの家に立ち寄り部屋を見て回っていたのだ。
「何ならみんなも付けてみるかい?」
「わぁ〜!付けていいの?」
「もちろんさ!ま、あたしの用事が済んでからにしとくれよ」
そう言ってしいなは自分の部屋を見回した。
「こうして改めて自分の部屋を見てみるとゴチャゴチャしてるねぇ」
「えー、そんなことないよ。みんな綺麗だと思う」
「そ、そうかい?」
コレットに無垢な笑顔でそう言われ、変に顔を赤くする。
しいなのこういうところが女性っぽいのかなぁと密かにプレセアは観察していた。
「さて、そろそろあたしは準備に行ってくるよ。みんなはここで待ってて」
「ええ。色々観察させてもらうわ」
「んなこと言ってリフィル様、くすねたりするんじゃねーの?」
「きゃっ!?ぜ、ゼロス!?」
もう一人の神子・ゼロスが隠し戸から侵入。
「あなた、勝手に女性の家に足を踏み入れるなんて…!!」
「ゼロスくん、最低です」
「さ、最低はねーでしょうよプレセアちゃん!?それに俺様、この部屋に何回も入ったことあるんだもん♪」
「神子としてそんな行動は間違ってると思うわよ?」
「そんなんじゃねーってば!昔からアイツとは知り合いだったのよ〜。で、この部屋で色々喋ってたわけ」
女性三人はゼロスとしいなの共通点を探したが、まったく見つからない。
「あなた、子供の頃から体目当てなの!?」
「何でそうなんの!?俺様そういうオーラでも出てんの!?」
「こ、子供の頃からしいなを……!?」
「コレットちゃん、ロ○コン扱いやめてくんない?」
「ゼロスくんからはむしろそういうオーラしか感じません」
「…ひ、一言一言が痛ェよプレセアちゃん…。」
「で、結局のところどういう関係なのかしら。正直に白状しないと…!」
リフィルが殺気を出してロッドを構える。
「だあああ!ちょ、言うから!言うからぁあ!アイツが任務でメルトキオに来るからそのとき知り合っただけなんだってば!」
「へえ〜、仲良しさんなんだね♪」
「だ、誰があんな乳しか取り柄のない女なんか…」
「でも実際、しいなを助けたりすることあるじゃない?」
「そりゃあしょうがなくですよ〜リフィル様。ちょっと鈍くさいから注意してやってるだけで」
口を開けば開くほどゼロスの立場が悪くなっていく。
「…へえ〜?」ニヤニヤ
だがそれをゼロスが気づいたときにはもう遅く、女性三人はニヤニヤしながらゼロスを見ていた。
「…り、リフィル様の意地悪〜〜〜!!」
その場から泣いて退散する22歳男子(笑)。
「どうして私だけのせいなのかしら」
「いじめてるとき、一番うれしそうな顔をしていたからでは…」
教師である自分の顔がそんなにも相手に脅威を与えてしまうのかと軽く落ち込んでしまうリフィルであった。
「あ〜あ、やっぱ俺様カッコ悪ィな…」
「あれ?ゼロスじゃないか。こんなところでボサッとしてるんなら手伝っとくれ」
「…またお前か…。俺様だるいから無理ー」
「うるさいねぇ!ほら、さっさとこの札持ちな!」
「へいへい」
リフィル達から逃げてきたゼロスはしいなと遭遇し、手伝いをすることになってしまった。
「しっかし、戦闘してる時から思ってるけどこんなペラッペラの札にすんげー力があるもんだな」
「昔からのミズホの風習だよ。この札に死んだ人への思いを書いて死体と一緒に燃やすんだ」
「ふーん…」
会話を終えたとき、ゼロスはしいなの顔が少し歪んだように見えた。
「書くモン書いて死体と一緒に燃やしてお前は納得するのか?」
「え?」
「あ。いやいや、何でもねー。さっさと運ぼーぜぇ」
「納得…って」
しいなはゼロスの言葉の意図が分からなかった。
ほとんどの準備を終え、後はしいなの心の準備一つとなった。
「しいな、大丈夫?」
「うん、ありがとうコレット。あたしは大丈夫だからサ」
「相変わらず強がるねぇお前は」
「ゼロス!そんな言い方は無いんじゃなくて?」
「いいんだリフィル…。このアホ神子の言うとおりさ。本当はこんなの…早すぎるよ」
声が震えているのが自分でも分かる。
コリンは死んでしまった、それはもうおきてしまった事実。
でもそれが受け入れられない。それはたぶん自分が年老いてしまっても感じてしまう。
しいなは自分の心の弱さを感じた。
「コリンっ…」
できることなら身代わりになってくれたコリンの身代わりに自分が…
「しいな、何考えてやがる!!」
「!!っ、ぜ、ゼロス?」
「まさか自分がコリンの代わりになりたいとか思ってんじゃねーのか?」
「えう…っ!そ、そんなこと」
「…図星じゃねェか。それが死んだ奴の葬式前に考えることかよ?違うだろ?」
しいなは胸がズキンと痛んだ。ゼロスの言い分はまったくの図星だったからだ。
悔しさに唇を噛んだしいなだったが、そんな事をしても痛さが和らぐことはない。
「アンタに言われなくたって分かってるよそんなこと!!分かってるんだけど…あたしっ」
「分かってるなら無理にでも割り切んだよ。割り切らねーと…この先何年もつらくなっちまうだけなんだぜ」
いつの間にかゼロスは幼き頃に母親を失った悲しげな目をしていた。
そしてその気持ちはしいなにも汲み取れた。過去の瘡蓋を剥がすように話すゼロス本人もつらいのに…
『しいなに仲間ができてコリンも嬉しいよ』
コリンとの何気ない会話の中に出てきた言葉がしいなの胸に大きく突き刺さった。
「コリン…」
しいなは札に一言書いて、コリンの幽体を入れた棺桶の上にそっと乗せた。
『しいな、元気でね』
「…精一杯元気に生きて見せるよ」
”ずっと大切な友達だよ。”
コリンに向かって微笑みながらしいなは札にこう綴ったのだった。
+あとがき+
ゼロしいって割と好きなのですが公式じゃそんなに人気無いんですかね。
しいなとすずはどうしてあんなに違うのか。(胸囲的な意味で)