「ふっ、ふっ、ふっ…」
フュッ…フュッ…フュッ…

宿舎前、自分の息と素振りの音だけが周りに響く。

「もっと強くならなくては…このままじゃ駄目だ…!!」

脳裏に浮かぶ守るべき姫の姿を思うと剣を振る力も強くなっていく。 「お、リンク。早起きだな」
「ああ、マリオ」

その静寂を断ち切るかのように赤い帽子を被った男が剣士に話しかける。

「おはようございます。今日は早いですね」
「ああ、たまにはな。それよりお前大丈夫か?いつもより早いんじゃないか?」
「いえ、ちょっと…気になることがあっただけなので…」

ごまかすように笑いながらリンクはタオルで汗を拭いながら部屋へとあがっていった。
リンクの様子が気になったマリオだったが空腹なためキッチンへと向かうのだった。

『クフフフフ…』

「?」
「「リーンークーーー!!子供になれぇぇ〜〜!」」
「うわああああ!ちょ、カービィにピチュー!やめてくださいってば!!」

ピチューとカービィはいつも一緒になり日々の遊び相手を探している。
今日はリンクがその対象になり、身に着けているマスターソードを奪おうとしていたのだ。
そばにいたマリオとピーチは二匹に追われてるリンクの姿がはしゃぐ子供のように見えていたり。

「そういえばリンクって元は子供なんでしょ?」
「え、ええ。マスターソードの力で大人になっています」
「だったらどうして丁寧な口調になってるのかしら。…子供に戻るとお子ちゃま口調!?

ピーチの目が光るのとリンクの第六感が危険を察知するのは同じタイミングだった。

「リンク、マスターソードよこしなさああああい!!」
「う、うわぁぁぁぁあ!ピーチまでぇぇぇぇ!やめてくださいってば!!」
「いいじゃない減るもんじゃなし!初心忘れるべからずよ」
「そういう問題じゃないでしょうが!!」

ピチューたちと違い本気でリンクを追うピーチはもうクッパにすら止められない。

「う…っ」

次の瞬間、リンクは力なく倒れてしまった。

「チャンス!!…って……」

ピーチの目の前で倒れたリンクの顔は火照っており苦しそうにしていた。

「リンクっ!!!」


「リンク…大丈夫かしら」
「大丈夫よ。ちょっと疲れが溜まってただけだって」

倒れたリンクをマリオが担ぎ部屋へ連れて行き様子を見た。
病状を調べると疲労から来る風邪。大事には至らないと知った一同はため息をついた。

「リンク…私のせいで」
「大丈夫ですよ姫。薬も出したし一日休めば回復するでしょう」

先ほどまでリンクを追い掛け回していた張本人であるピーチは少し責任を感じていた。
マリオは不安がるピーチの顔を見て『さっきまでと別人やん』と思いながら慰めていた。

「姫、さすがに心配そうだね…」
「うん…」

リンクを看取るピーチの姿を部屋の外から隠れて見守るカービィとピチューは少なからず責任を感じていた。

「僕たちも悪いのかなぁ…」
「僕がいつもリンクの食事まで食べちゃうから…!」
「あれっ、だったらヨッシーも悪くない?」
「そうだ!ヨッシーが悪い!!」

責任転嫁もいいところである。


「う……」
「リンクっ!!」

陽が落ちた頃、ようやくリンクが目を覚ました。
目が覚めたリンクを確認するとピーチは嬉しさのあまりリンクに抱きついた。

「うわあっ、ピーチ!?」

ピーチのいきなりの行動に女性慣れしていないリンクは先ほどと別の理由で顔を赤くした。
しかし少し時間を置きピーチの頭を軽く擦り、手を解いた。

「凄く心配したんだもん。私のせいで倒れちゃうし」
「貴方のせいじゃないですよ」
「でも…」

今にも泣き出しそうなピーチの顔を見てリンクは「何かしなければ」と思い手品を披露した。

「きゃっ…!」
「綺麗でしょ?ミュウツーに習ったんです。だから元気出してください」

疲れた顔をして、それでもピーチを励まそうと必死なリンクの姿が
ピーチの心を揺さぶり、高ぶらせていた。

「貴方って…ホントいい男ね」
「…もう少し別の言い方無かったんですか…」
「だってそのとおりなんだもの♪」

そういうとピーチはリンクの頬にキスをした。

「っ!!ちょ…!!///」
「じゃあ、早く元気になってね!」

リンクに満面の笑顔を見せたピーチはスキップで部屋を出て行った。
一方、キスという行為が初めてなリンクはどうすることも出来なかった…

「…かないませんね」



+あとがき+
リンクとピーチは優男×わがまま女みたいな非常にイチャらせやすいカップリング。
俺のスマブラ小説でのマリオの立ち位置の便利屋っぷりは異常。