「ケケケッ…」
「うう〜、何だかあのコ雰囲気変わっちゃったよォ…どう接したらいいか分からないよォ」
「バァカ!ンなもん一々考えなくていいんだ!ぶっ飛ばせばいいんだよォ!!」
<<ガキィン!>>
武器を交えるたびに武器職人の凄まじい”狂気”が武器-ソウル-に伝わる。
「(ぐッ…何なんだこの戦いは…!)」
「…!」
ふと目覚めるとソファの上だった。毛布もグチャグチャになっておりソファは寝汗で濡れていた。
"ソウル=イーター"は立ち上がり時刻を確認すると洗面所へ向かった。
「…ちっ、胸糞悪ィ夢見ちまった」
先日のメデューサ事件。クロナとの戦いに苦戦していたマカは最終手段として自分の魂を悪魔に売ったのだ。
その後遺症は残ってはいないもののソウルはマカが心配になっていた。
「………。」
鏡で自分の顔を見るたびに思う。武器の栄光”デスサイズ”を目指しているのに
なぜこんなにも弱い顔をしているんだろう。デスサイズどころかパートナー一人守れねェ。
「そういや、ブラックスターやキッドは大丈夫なんだっけか?」
動転している気を少しでも落ち着かせようと関係ないことを独り言してみる。
だがそうすればそうするほど不安が募っていくばかりで壊れそうになる。
そんなとき、一人の人物が部屋を訪ねた。
「もしもし、ソウル?」
「おうマカか、入れよ」
入室してきたマカの顔色はずいぶん良くなったようだ。
元気な姿を見てホッとしたのかソウルの口から思わず笑みがこぼれる。
「?何笑ってるの?」
「別に何でもねェよ。体はもういいのか?」
「うん!シュタイン先生に手術されかけたけどね」
「あのおっさんは見境ないからな…」
まったくそのとおりである。
「…っくしゅ」
「あったかいモンでも持ってくるわ。紅茶でいいか?」
「あ、いいよ。あたしがする」
「俺がお前ェのためにいれてんだ。文句言うなって」
ソウルはコーンポタージュをマカに差し出す。
「…え、ボケ?」
「違ェよバカ、ちょうど紅茶切らしてて無かったんだ」
「ビックリした。後遺症が残ってるのかと」
「うっせ、いいから飲めほら」
「うん、ゴメン」
少しの間、沈黙が流れる。
「なあ、マカ」
「ん?」
「お前…さ、怖くねーのか?我を忘れて暴れまわっちまって…いろんなモン傷つけるかもしれねェのに」
「…大丈夫だよ。だってソウルが一緒だもん」
『〜〜〜〜!!///』
迂闊だった。
「バカ!そういうことは隠れて言うもんだろ!」
「え?どーいうこと?」
「もういいって」
”コイツ”はいつもそうだ。周りの事なんか何も考えず自分で突っ走っちまう。
でも、俺はそういう奴を選んだ。別に理由があるわけじゃない…ハズ。
「あ、そーだ!シド先生に呼び出し食らってるんだった!」
「はァ!?何でそれを早く言わねーんだ!!」
あの先生を怒らせるとどうなることか。
文字通り”死神”のような形相が頭に浮かんだ二人は急いで支度し、教室へ向かった。
…が、間に合ったわけもなく。
「あーあ、宿題まで出されちまったじゃねーか」
「しょうがないじゃん!遅れてたんだし。それに解剖されなかっただけマシだと思わなきゃ」
「……帰って寝るか」
「もー、ソウルってば!」
途端にソウルは立ち止まる。
「ソウル?」
「今日叱られた内容、遅刻だけじゃなかっただろ?」
シドは遅刻だけで簡単に怒るような人間じゃない。それは二人には分かっていた。
もちろん”マカの狂気”についてだ。
「う…」
「で、お前はどうすんだ?」
「え?」
「え?じゃねーだろ。これからもいろんな任務やっていかなくちゃなんねーのにどうするんだ?」
「そ、それはどうにか…」
「なんねーだろ!!」
マカが初めて聴いたソウルの怒声だった。
「何がどうにかなるだ!!ならねェに決まってんじゃねーか!
クロナとの戦いはどうだった!?一人で突っ走っちまったんだろ!?その結果お前が怪我して…」
「ソウル…」
ソウルがふと我に返るマカはその場でと立ちすくんでしまっていた。
「…あ、っと悪い…言い過ぎた」
どんなときでも激しく言わずマカを思ってくれるソウル。
「何で言うのやめちゃうんだよ…いつもソウルは私を気遣っちゃって…私が悪いのに!!」
「気なんて遣ってねェよ。怒鳴っちまった俺が悪かったんだ。
お前だったら一々気を遣わなくてもなんとかなるって信じてるからよ」
職人が職人だと武器も武器。バカばっかりだなと感じたマカは泣きながら笑ってしまう。
「そりゃガサツだし不器用だし言う事きかねェし物事が考えられねェけど、だからこそ信じられるんだ」
「ガサツは余計だよ、このカッコつけ」
「なんだと!?」
「うるっさい、ばーか!」
自分を信じてくれている気持ちが嬉しかった。
そう思いながらお互い遠慮もなくこれからも戦っていける、そう感じた瞬間だった。
+あとがき+
ソウルイーター大好きになっちゃったので書いてみた。
本当は椿を書きたかったんですけどブラックスターを俺の感性で書くのは無理だなと思い諦めました。