「はぁ、はぁ…」
「みんな、これで決めるよ!」
プリキュア、ロイヤルレインボーバースト!!

こうしてスマイルプリキュア達はまた一つの困難を乗り越えた。
マジョリーナの企みにも気づかずに…


時は2時間前に遡る。


「ヒェッヒェッヒェッ、ついに完成させただわさ!」

液体の入ったフラスコを片手に騒ぐマジョリーナのもとに残りの幹部の二人がやってきた。

「何作ってんだ?うっせーな」
「惚れ薬だわさ。これぞ世紀の大発明!私は神となるどぁわさぁああ!」
「惚れ薬って何だオニ?」
お前は扱いづらいからしゃべるなだわさ。
ひっ酷いオニ!?

惚れ薬。その名の通り飲んだ本人を見るとたちまち好きになってしまうという魅惑のアイテム。

「しっかしこんなモン作ってどうする気なんだ?」
「これでプリキュアを倒すだわさ」
「どうやって倒すオニ?」
口を開くなだわさ。
俺に人権はないオニ!!?

単なる惚れ薬などプリキュア攻略の鍵になるとは到底思えなかった。
ウルフルンは疑問に思いながらもその薬を持ち、プリキュア討伐へと向かったのだった。



「げっ、もう一匹倒しやがったのか!?仕方ねえ、アカオーニ!ハイパーアカンベェだ!!」
「了解オニ!」
「ええっ、まだいるの!?」

ウルフルンの出したアカンベェを倒し喜んだのもつかの間、アカオーニの黒っぱなから放たれたアカンベェがプリキュアを襲う。
ロイヤルレインボーバーストを繰り出し疲労困憊の5人は苦戦を強いられた。

「よっし、あいつらが戦ってる間にあいつらの水筒にこの薬を…」
「何しとるんやー!サニーファイヤー!!!」

ウルフルンの異変に気づいたキュアサニーは必殺技を繰り出す。

「ぐあああっ!」

サニーの技がウルフルンの背に命中し、少しの隙に薬を手放してしまった。
そして薬は宙を舞い…

「〜〜〜〜っ!!」ごくごくごく…

そのままウルフルンの大きな口の中へ…。

「(し、しまったぁぁぁああああ!!!)」
「(いや落ち着け、幸い体は何にもなってねえ!薬は失敗だったんだ!)」

体に異変を感じなかったウルフルンは大きなため息を付いた。
だが次の瞬間!

「ウルフルゥゥン!!!」
「しまった、キュアサニーの事をすっかり忘れちまってたっ!!」

慌てて防御体制を取るウルフルン。しかし、サニーの行動はウルフルンの予想を遥かに上回ったものだった。

「なぁ…何で顔隠すん?ちゃんと見せてや…」
「なっ!?何気持ち悪いこと言ってやがる!!」
「気持ち悪いなんて傷ついたわぁ♪」
「!?(こいつ、目が正気じゃねえ…!)」

サニーのウルフルンを見る目は焦点が定まっていなかった。
それに表情が普段の男勝りなものとは違い、どこか妖艶にも見えた。

「こいつ、完全に薬にやられてやがる…」
「サニー!!大丈夫!?」
「ウルフルン!キュアサニーを離すクル〜!!」
「おい、これのどこが俺が掴んでるように見えるんだよ!よく見ろォ!!」

ウルフルンは途端に自分の言ったことを後悔した。

「…狼さん、大っきいお口♪」
「ねえねえ、スケッチしたいからもっとこっちに来てよ!」
「あれ、どうしてだろう…イケメンに見える…」
「この胸の高まり、これはまさか…!」
「(し、しまったァァァァ!よく見ろなんて言うから…!!)」

洗脳完了。

「どうにかしてここから抜け出さねーと…アカオーニ!一時撤退だ!」
「ウルフルン、大好きオニ〜!」
お前もかよ!!!

離脱しようにもサニーが手を掴んで離さない。このままでは5人の餌食になってしまう。
そう考えたウルフルンは少し戸惑いながらも行動に出た。

「ちっ、仕方ねえ!」
「わわわっ!?」

サニーの手を解くのではなくそれを利用し、抱きかかえる姿勢を作る。
言わばサニーをお姫様抱っこしながらその場から退散したのだ。


「…ふう…ここまで来りゃいいだろ」
「どうしたん?こんな人気の無いところに連れてきて。はっ!まさかあんた…///」
「だあああっ!うぜえ!くだらねーこと考えるなっつの!!」

プリキュア達は撒いたが必死に逃げた故に自らの現在地が掴めない。
さらに連れてきてしまったサニーがこの調子では意味が無い。一刻もはやく元に戻す必要があった。

「その、うちまだ中学生やし…その…まだそういう事って…」
「お前が思ってるようなこたぁしねえよ!っつーかガキの癖にませてんじゃねーよ」
「が、ガキ!?誰がガキや!レディーに向かって!!」
「何がレディーだ!つまんねえことでうだうだ言ってんじゃねーよ人の気も知らねえで!」

他人を惚れさせるといってもたかが薬。持続時間はさほど長くはないはずだ。
マジョリーナに聞くのが最善策なのだがそういうわけにも行かず、ウルフルンは身動きが取れずにいた。

「なあ、これからどうするん?遊園地にでも…」
「行かねえよ!!…?(いや、待てよ…)」

『このままサニーを手なずければ戦力を減らせるんじゃねえか?』
そう考えたウルフルンはサニーを連れて遊園地へと向かった。


「うわああ!ほんまに遊園地や!」

サニーはいつの間にか変身が解け、日野あかねに戻っていた。

「おいサニー、どこに行く?」
「なあ、そのサニーってのやめてくれへん?今のうちは日野あかねや。あ・か・ね」
「………あ、あかね」
「よっしゃ♪」

そう言うとあかねはウルフルンの左腕に抱きついた。
さすがのウルフルンも普段敵にしている相手の変わり様に動揺を隠せずにいた。

「(くっそ、何で俺がこんな事を…)」

女子と遊園地、ましてやデートなど経験皆無だったウルフルンはこれ以上ない程困っていた。

その時、あかねの脳内はというと…


「…!!(あれ?うち、何してたんや…?)」

どうやら薬の効果が切れたようであかねは正気に戻った。
一瞬気が動転したあかねだが一連の記憶を取り戻した瞬間頭が真っ白になった。

「えっ、えっ、えっ…!?(うちがウルフルンとゆ、遊園地ぃいい!?)」
「(好きでも何でも無いのにぃいい!!?)」

オマケにこういった時何一つ行動を起こせないダメ男の典型だった。

「…でも、何なんやろ。この感じ。手を離したくない」

あかねは抱きついた手を解こうと考えたが体が言うことを聞かない。本能で動いていた。

「っし、最初は思い切ってメリーゴーランド…」
「ジェットコースターや!」
「え?」
「このままジェットコースター突入や!初っ端から飛ばして行くでぇえ!!」
「あ、こらおい引っ張るなっ!!」

あかねは開き直る事にした。今この状況が正しいかどうかは分からない。
しかし、今の自分はウルフルンと共に居たい。理性がそうさせていたからそう動いた。

「急ぐで!ウルフルン!」
「あっ、おいこら!待てあかね!」
「…んふ、あかねやって。悪くないやん♪」

…どうしてこんなことになってるだわさ?



+あとがき+ 2013/3/29
ガサツな男としてウルフルンさんを書きたいなあと思ったのですが誰と組ませようかと思うと…。
公式ではみゆき寄りなのですがウルフルンさんはあかねの方が似合ってると思います。