「海だーっ!!」
「きゃっほーい♪のぞみさん、早く行きましょう!」
「おーい、準備を忘れてるんじゃないか?」
「大丈夫!ほーら!」

そういってのぞみは思いっきり上着を開く。
太陽に輝く白い肌、まだ発展途上の体系とそれに見合った桃色のビキニが姿を表した。

「うわああっ」
「え〜、どうしてそっち向いちゃうの?ちゃんと見てよねえねえ!」
「わ、分かったから!分かったから何か羽織ってくれ!」
「ふ〜ん…」ニヤニヤ

いきなり水着姿を露出するのぞみを見てさすがのココも顔を隠す。
それを見てかれんは何かを思いついたようだった。

「よーし!うらら、準備体操しよっ」
「はい!のぞみさん!」
「うわあ!うららの水着可愛い〜」
「はいはい、いいから横に並ぶ!うららだって芸能人なんだから体調には気をつけなくちゃなんないでしょ!」
「は〜い…」

いつものようにりんが二人を仕切り、体操を始めた。
その間にココ、ナッツがシートを張り、ビーチ傘を設置する。こまちはというともう熱さにやられていた。

「大丈夫?はい、こまち」
「ありがとう。準備手伝えなくてごめんなさい」
「いいの、傘の中に入ってて」

日射にやられているこまちにスポーツドリンクを渡し終えたかれんは引き続き設置作業に戻った。

「よーし、泳ぐぞー!!」
「おぉぉぉ〜〜!」
「駄目!柔軟体操にランニング。満を持して体をほぐしておかないと海は楽しめないわよ」
「えー!?それ運動部のメニューですよ」

海を楽しむにはまだまだかかりそうだ。

「日射病なら肌を見せない方がいいんじゃないか?」
「ありがと、ナッツさん」

ナッツの差し出したトレーナーを羽織るため体を起こした。トレーナーを羽織る姿を見守るナッツの瞳。

「そ、そんなに見つめないで。恥ずかしいわ…」
「あ……悪い」

そう言いつつも本能的にこまちの姿に目が行ってしまうのだが。
見られている側も顔を赤くし、今にも気を失いそうだ。

「パルミエの住民もそういうことに興味があるのね」
「い、いやそういうわけじゃないんだが…」

優しくも冷たい目線がナッツを突き刺す。

「…すまない」
「いいのよ女性として嬉しい事なんだから。それより…少しお話しないかしら?」

再び優しい瞳に戻ったこまちの横にナッツが座った。
ナッツもクーラーボックスから飲み物を取り出し、二人で軽く乾杯。

「話したいことでもあるのか?」
「もう…半年近く経つのね。ナッツさん達と出会ってから」
「そうだな。…本当にすまない」
「どうして謝るの?」
「俺達が勝手に現れて訳もわからないままプリキュアにされて迷惑だったんじゃないのか」
「そんなことないわ!」

こまちは強く否定した。

「確かに最初は驚いたわ。プリキュアという存在、ナッツさんやココさんのような生き物、パルミエ王国。
 でも驚いたのと同時に興味も湧いたの。この謎を解き明かしたら何が待っているんだろうっていう…ワクワク感かしら」

日射病でやられていたとは思えないほどこまちの目は生き生きとしていた。

「それにね、単純に楽しいの。みんなと居ると。だからね、迷惑だなんて言わないで」
「すまない。変な気を使いすぎた」
「ふふっ、ナッツさん。さっきから謝ってばかり」
「あまりこういう機会に触れたことがないからな。」

ナッツが小さくため息をつく。

「でもナッツさんは変わったわ。」
「俺が?」
「そう。最初のナッツさんなんて微笑んでもくれなかったじゃない」
「そうだったか…?あのときの俺はどうかしていたのかもな」

そういって二人で笑い合った。
今まで二人の会話がこんなスムーズに進んだことがあっただろうか。

「だが実際こまち達から学んだことも色々あった」
「私達から学んだこと?」
「一時、ドリームコレットが奪われパルミエ王国の一大事になったときでも
 プリキュアが戦っている姿を見ていたら…次第と勇気が沸いてくる」
「私も…のぞみさんに夢を貰ったわ。のぞみさんが居なかったら小説家になる夢きっと諦めてた」
「ドリームという言葉の似合う奴だ…」
「本当ね」


「っくしゅん!」
「のぞみ大丈夫?少し上がったほうがいいんじゃない?」
「ううん、大丈夫大丈夫!」



「だが、それもいつまでも続かないだろう」
「そんな悲しいこと言わないで」
「………こまち…」

ずっと気にしていたことだった。なるべく口に出さないでおこうと思ってた。
必ず来てしまうことなのに口にしてしまった事を謝りそうになったナッツだったが必死にこらえた。

「…だからこうして思い出作りをしてるんだろう?」
「そうね」
「顔色、良くなってきたな。泳ぐか」

そういってこまちの手を引こうとしたが何故か拒否される。

「体操が先!でしょ?」
「ふっ、そうだな…」


「あー!こまちさん体操始めた〜!!」
「ナッツ〜!こまちさ〜ん!バレーしましょうよー!!」



「…まったくあいつらは」
「楽しいからいいじゃない。それが一番、でしょう?」
「そうだな。じゃあ行くか!」

別れのときがきたらきっと悲しい。
だからこそ、楽しいことをするときは全力で楽しもうとこまちは思った。



+あとがき+
一期の最終回直前に書きましたがもう思い出補正が凄いです。
恐らくナッツは俺が思っているより喋らないと思います。キザな奴でございます。