「ふう…」

大海原を走る船に揺れて、考古学者は何を思う。

「……」
「ロビン??」

そんな仲間の姿を見て頭を横に曲げる船長。
ルフィにとって”沈黙”など無意味でしかない。にも関わらず
ロビンはずっとその”沈黙”の状態だからだ。

「……」
「んんん?」

何が楽しくてロビンはずっと黙り込んでいるのか。
船長は楽しい事が大好き。でも”沈黙”は楽しくない。早くも我慢の限界だった。

「おいロビ…」
「ふふっ」
「!?」

わ、笑った!? 何も面白く無いのに笑った!!?
普段、物事を考えないルフィの思考回路はショート寸前だった。

「ろ、ロビン!どうしたっ!!」
「…ルフィ?さっきからそんな所でどうかしたのかしら?」
「どうかしたのかしら?じゃねーだろ!お前、どっかおかしいのか!?頭でも打ったのか!?」
「えっ?」

船長いきなりの誤爆だった。
そんな船長の考えを察したのかロビンはふと笑顔になった。

「ふふっ、ありがとう」
「??ああ、いいぞ」

そうしてロビンが立ち去ろうとしたとき、ルフィがロビンの腕を掴んだ。

「えっ!?」
「なあロビン、もう一回笑ってみろ」
「え、っと…こう、かしら」にこっ

ロビンが今できる最高の笑顔。少々ぎこちない感じだが…。

「にしししし!それでよしっ!!」
「い、いったい何?」
今は上手く笑えてる!
「…!!」

ロビンにとって不意打ちだった。ルフィのいきなりの発言に珍しく動揺を隠せない。
そしてその光景を見ている人物が一人いた。

「ロビンちゅわぁーん!今日もお美しい!」
「サンジ!飯!」
「お前はほんの30分前に食ったばっかりだろうが…」
「あら、私もサンジくんの料理好きよ?」
「い、今すぐ作りますっっ!!」

頭の上にハートをチラつかせながら厨房に向かうサンジ。
ルフィはロビンに向かって親指を立てて”グッド”の構えをした。ロビンもそれを返してくれた。

「………」

思えばロビンは船に乗り始めてからルフィについて不思議に思っていた。
他の人とは違う”人を惹き付ける何か”…それがこの少年から感じられた。
そしてロビン自身もそれにあてられてしまった。

世界政府から20年逃げ続けてきた自分が一人の少年に惹かれるなんて
自分でも分からない感覚だった。でも、それに後悔は無い。

「貴方のおかげで上手く笑えてる」
「ふ〜ん、そうか?関係ねェだろ」
「ふふっ、そうね」

何を言っても通じない、動じない。自分の道を突っ走るこの人にいつしか興味すら感じていた。

「………(じー)」
「ん、何だ、どうした」
「いいえ、見てるだけよ」
「そうか」
「…………(じー)」
「………」
「…………」なでなで
「うわっ!どうしたロビン!?」

なでてみた。

「…………」びよーん
「ぐにに…何だよー」

のばしてみた。

「…私は何をしてるのかしら…」
「知らねェよ」

この年齢になって”好奇心”が生まれるとは思わなかった。

「ロビンちゃ……!?」

調理を終えたサンジが見た光景(ロビンがルフィをなでなでしている様)はこの世の物とは思えないものだった。

「ルフィイイイイイイイイイ!!てめぇ、船降りろこのクソゴム野郎ォォォ!!」
「うわ!サンジ何怒ってんだあああ!?」
「しかも号泣してるわ」
「う、うう…」

OTZ ←今のサンジの心境&体制。

できる事ならこのにっくき船長に怒りをぶつけたい。
しかし両手は愛しのロビンに捧げる食事を持っていた。足を使うと体制を崩す危険性がある。

「う、うぅぅぅ…」
サンジは迷っていた。
どこへもぶつけられない怒り、それを涙に変えるしかなかった。

「愛のナポリタンお待ちっっっ!!」
「あ、ありがとう」
「うわああああああああああああああん!!!」

愛しのロビンに食事を捧げ、そそくさと部屋に戻っていったサンジであった。

「何怒ってたんだ?あいつー」
「……何か悪い事をしたみたいね」

ロビンは全てを理解したが秘密にする事にした。
良く晴れた昼の出来事、サニー号コックのサンジの瞼も腫れていた。



+あとがき+
「子供っぽいロビン書きたいなぁ」と漠然に考えて書きたいように書いた結果wwww
サンジには悪い事をしたなぁと思ってます。ただ彼はもうこうするしか…。