ポーネグリフ、それはこの世の歴史を示した石碑。
書かれている事は古代文字を解読できる数少ない者にしか読むことができない。
麦わらの一味の一員、考古学者のニコ・ロビンはその数少ない者の一人だった。

「ねぇロビン。このページの文章読んでくれる?」
「いいわよ。…これは…」
「うおーーい!ナミ!島が見えたぞーっ!!」

そう言って女部屋を勢い良くこじ開ける船長。デリカシーの無さはいつもと変わらない。

「はいはい…風も波も良好だしそのまま着けていいわよ」
「だってよウソップ!」
「よしっ、舵調節してくるぜ!」

ウソップの絶妙な舵取りで船を上手く島に着けると、ルフィは冒険用のリュックを取り出した。

「うほーっ!すっげぇ森だなぁ。サンジ、海賊弁当三人前だ!」
「もうできてるよ」
「確かにこの自然は冒険しがいがあるなぁ」
「ウソップとチョッパーも出るのか。おいクソ剣士、お前は?」
「あぁ?コックにゃ関係ねーだろ」
「何だとこのクソマリモ野郎!」
「誰がマリモだ!!ちょうど良い、あっちで決着つけさせてもらおうか」
「ハッ、良い度胸じゃねえか!!三枚、いや百枚にオロしてやる」

島に着いたとたんぞろぞろと降りていく船員達。

「あたし達も行きましょ、ロビン」
「そうね。新しい生態が見つかるかもしれないわ」
「あっ、そうだわ!フランキー、あんた暇でしょう?着いてきてよ」
「あァ?行ってもいいが何をするんだ」
「決まってるじゃない。護衛よ護衛。サンジ君の代わり」

「か弱い娘じゃあるまいし」と思ったフランキーだったが特にする事も無いため着いていくことに。
いつの間にか船の中は寝ているブルック一人になってしまった。
この光景は何も知らない人が見たら乗り上がってしまった漂流船のように見えるだろう。


「茂みに凶暴な動物とか隠れてんじゃねーだろうな」
「そこはあんたが命を懸けて頑張りなさいよ。護衛なんだから」
「へいへい」

と、噂をしていると茂みから大きな虎が現れた。

「虎ァ!?何でこんなところにこんな動物が住んでるんだよ!!」
「知らないわよそんなの!」
「ロビン!危ねえっ!!」

猛獣に気を取られて崖の存在に気が付かなかったロビンは足を踏み外してしまったが、
とっさにロビンの体をフランキーが丸太のような手でがっしりと掴みなんとか踏みとどまった。
だがまだ危険は去っていない。虎が隙を見せたフランキーの体めがけて突進を仕掛けてきた。

「うぉああああああ!」
「ロビン!フランキー!!」

虎の突進を受けたフランキーとロビンはそのまま大きな崖から落ちていった。

あんた、よくも仲間をやってくれたわねぇ…?

!!!!
ナミの殺気が虎の殺気を上回った。虎自身、人間に恐怖を感じたのは初めてだろう。

「フランキーは無事だとしても、ロビンはあのままじゃ大変だわ。いったん船に戻らないと」

くるりと方向転換してナミはサニー号の方へ戻って行った。


「う、ぐ…痛ェ…結構落ちたみたいだな…。…!おいニコ・ロビン!」
「大丈夫よ。でも、ちょっと足をくじいちゃったみたい…」
「ああ、小さいけどアザができてやがる。チョッパーに看てもらわねえと」

当のチョッパーは崖の上。登るにしても急すぎて回り道をする他無かった。

「ほら、肩に掴まれ。おぶってやるよ」
「あなた。首が大きすぎて掴みづらいわ。」
「うるせえ」

そういいながらロビンの体を背で担いだ。

「痛っ」
「ああ悪い。アザの部分に当たっちまったか」
「ごめんなさい。打ち所が悪くて」
「謝ったって仕方ねーよ。…にしても、どうすりゃいいんだ?」
「一つだけ方法があるわ。」
「え?」


フランキーは少し後悔した。


「おい、お前…年齢ってモンがあるだろうよ…」
「仕方ないじゃない?これが一番都合がいいんだもの」

ロビンが提案したのは上半身と膝を抱え持つ、いわゆる”お姫様抱っこ”の形だ。

「まあ動きやすくはなったが…少しは恥じらいとかねえのか?」
「あら、無いと思う?」

小さなシャツ一枚を着て、お姫様抱っこの形。
これでもかと言うほど胸が強調される格好だったためフランキーも目のやり場に困っていた。

「…少しあこがれていたの」
「あ?お姫様抱っこってやつにか?」
「ええ。あなたに出会うまで興味なんて微塵も無かった。」
「柄にも無ェこと言うんじゃねーよ…」
「ふふ、本当ね」

柄にも無い、なんて言葉を使ってしまったがフランキーは真剣だった。
今までこういう浮いた話など一回もしなかったロビンが自分に好意を寄せている。
いつも難しい話はおちゃらけてごまかしていたが今回はフザけていては駄目だ。
フランキーは本能でそう感じた。

「あー、駄目だ!こういう真面目なシチュエーションはスーパーな俺には合わねえ」
「面白い顔になってるわよ」
「るっせえ」

顔を赤くするフランキーをさらに追撃するロビン。その姿は間違いなく恋人同士のそのやりとりで。

「あなた、顔と中身が時々合わないときがあるわね」
「お前に言われたくねーな。」


「ロォ〜〜〜〜〜ビンちゅわあああああああああん!!!」
いつもの皮肉を交えたやりとりを交わしていると遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。

「…おお」

金髪ぐるぐるマユゲの男が木を蹴り倒しながら進んできた。
何故ナミをお姫様抱っこしているのかは誰も知らない。

「逃げて、フランキー」
「…お前なぁ…」

そう言いつつフランキーはロビンを抱きかかえたまま走り出した。

「って、待ておいパンツマンこらァァァァァ!」
「お邪魔だったかしら。あたし達」



+あとがき+
ロビン姉さんが夢に出てから書きたくて仕方が無かったので書いてみたのですが
書けば書くほど自分で恥ずかしくなっちゃうという。そしてあまり進まないと言う矛盾。怖い怖い。