その日はいつもと変わらない日常だった。いつもどおり食堂は大忙し。
「リエナちゃん、ちょっとお使い頼んでいいかしら?」
「え?いいですけど…」
この食堂を経営している大輪ヤマトの母、ミエが従業員のリエナにお使いを頼んだ。
「これとこれを…」
ふとミエは手伝いをするグレイに目が行った。するとミエは何かピンときたようだ。
「グレイと二人で行ってきてくれる?」
「えっ?お兄ちゃんと? お店は大丈夫なんですか…?」
「大丈夫、大丈夫!ヤマトが居るし。いざとなればブルも呼ぶわ」
「そ、それじゃ行ってきます…」
「んあー?リエナお使いか〜?せやったらワイが…」
ゴスッ!!
続きを言う前にヤマトの顔面に肘打ちを食らわせる。
「ぐふぁ!!何するんやぁぁ!」
「ちょっとは空気読みなさいよバカ!」
「何もそんなどつかんでも…」
「それじゃミエさん、ヤマト、いってきます」
「すぐに戻ってくる」
「行ってらっしゃい、二人とも」
「どつかれ損やで…」
グレイとリエナの二人は買い物のため遠くの町へと出かけていった。
「大丈夫かいな二人で。グレイはああ見えて結構おっちょこちょいなんやで?」
「ふふ、大丈夫よきっと。お兄ちゃんだもの」
そしてその二人はと言うと…
「えーっと…買いに行くモン確認するぜ。大根と卵と…人参…二人にやらせることか?これ…」
「まぁいいじゃない、すぐ行ってすぐ帰りましょ」
「そうだな…」
すると暫く歩いていくうちに町が見えてきた。ふいにリエナは駆け足になる。
「あっ、おい危ねーぞ!」
「大丈夫、大丈夫!って、きゃぁ!」
「リエナ!!」
突然出っ張った石につまずきそうになるリエナを得意のスピードで助けるグレイ。
「っ…!大丈夫か?リエナ」
「お兄ちゃん…!リエナの代わりになって!?」
「ん?ああ、大丈夫だよ。少しかすり傷が出来たぐらいだ」
「大丈夫じゃないよ!小さな傷でもばい菌が入ったらどうするの!?何処怪我したの?」
「…背中だよ」
「んー、じゃあ上脱いで」
「…は!?」
グレイは最初リエナが何を言っているのか分からなかった。
そりゃリエナだって恥ずかしくないわけじゃない。だが兄の体を思ってのことだった。
「は、早くしてよぉ!こっちだって恥ずかしいんだから」
「…なんでお前が恥ずかしくなるんだよ」
グレイはもうやりきれない気分になったがとりあえずこのままでは埒があかない。
リエナに背を向け上着を脱ぐがその姿が恥ずかしくて直視できないリエナも背を向いた。
「何やってんだよ、血とか出てるか?」
「ふぇ!?あ、うん。ちょっとだけ…。」
「うあっ!?」
グレイはふと背中に異物感を感じた。
「な、何した?リエナ」
初めての感触に焦るグレイ。リエナの方を見るとリエナも顔を赤くしていた。
「えへへ、消毒剤無かったから…なめちゃった」
「なめたって…お前、人の背中…きたねえと思わなかったのか?」
「大丈夫だよ。お兄ちゃんだし」
『お兄ちゃんだし』
妹の一言でこちらも恥ずかしくなりもう顔を上げられなくなった。
「…だぁぁ!早く買いに行って早く帰るぞ!!」
「あれ?照れてるのー?」
「照れてねー!!」
必死に平静を装ったグレイだったがミエにはその様子がバレバレだったらしく
食堂に帰った後もジロジロ見られ続けたグレイだったのでした。
+あとがき+
やっちまいました。実際のリエナはこんな事絶対にしません。(ぁ
未だに再放送しないかなと思っていますが叶わぬ夢なんだろうなあ…。